二刀流カーナビ活用術

 カーナビは訪点に欠かせないツールです。回り道して電子基準点をいくつか訪ねた際に会得した「二刀流カーナビ」についてご説明します。もちろん一子相伝の秘術などではなく、タブレット/スマホの地図とクルマのカーナビをどう併用するかという話です。

 

 ご存知のようにカーナビはルート案内だけでなく到着時間の予測も行ってくれます。カーナビが示す通りのルートを走っていれば、到着予想時刻はあまり動きませんが、寄り道や回り道をすると徐々に後ろにずれていきます。空港が目的地の場合は必着時刻が決まってきます。予想時刻と必着時刻の差が、自分の「持ち時間」となります。その持ち時間の許す中で、行動範囲を広げてみたわけです。

 

 具体的なルートとしては、秋田県の能代市から秋田空港へ南下する折、高速を降りての男鹿半島への寄り道でした。

 

 男鹿半島には「男鹿1」「P男鹿」「男鹿2」と3つの電子基準点があります。「男鹿1」「P男鹿」はクリアできましたが、「男鹿2」を探索中にカーナビの到着予想時刻が必着時刻と一致し、タイムアップ。持ち時間がなくなったので探索を終了し、指示通りに空港に向かいました。男鹿コンプリートはなりませんでしたが、飛行機には無事間に合いました。

 

 知らない土地で、目的地から離れた場所にいても、現在時刻から移動時間を引いた「持ち時間」がどれほどあるかがリアルタイムで分かるのは、とても安心でした。いわばカーナビを“カウントダウンタイマー”として使う手法です。

 

 おかげで「時間が余りすぎて困った」「ギリギリすぎて焦った」にもならず、時間を有効に(訪点に)使うことができました。カーナビはもともと現在地やルートを知るためのツールですが、二刀流で使えば「持ち時間を把握しつつ移動経路を柔軟に変更する」ツールにもなり得るというのは、個人的にちょっとした発見でした。

(図は地理院地図を加工。赤が直行、青が回り道ルート)

 ところで、GPSカーナビを最初に実用化したのは日本のエンジニアたちだったという話は有名です。GPSの父と呼ばれるパーキンソン博士も、Googleに招かれての講演でこんなエピソードを語っています。

 

「スタンフォード大でカーナビの基本的なアイデアを紹介したことがある。興味深かったのは、5人ほど来ていた日本人は必死にペンを走らせていたが、デトロイトの自動車エンジニアはそんなことは起こらないと言わんばかりに首を横に振りながら聞いていたこと。

 通り沿いに住所が順番に振られているこちらと違い、日本には複雑な住所地番のルールがある。その後、詳細な地図と結びつき、世界初のGPSカーナビが日本で誕生した」

(24分頃からの内容を意訳) 


 巷では「嘆かわしいことに、子どもたちが紙の地図をピンチしたりフリックしたりするようになった」という声も聞かれます。紙の地図で育った世代としては、紙の地図の有用性も、電子的な地図のありがたみもよく分かります。

 一消費者としてできることはわずかですが、こんなに便利な電子地図やナビですから、新たな使い方を見出せるくらい使い倒していくことも、作ってくれた先人たちへの謝意になったりしないかななどと都合よく考えたりしています。