火山監視のまだ見ぬ「M」

 電子基準点は普通なら、強固なコンクリート基礎の上に設置される恒久的な施設です。商用電源を引き込み、観測データ収集のため光ファイバーを敷設する、たとえるならデスクトップPCです。いっぽうで、独立電源や通信機能を備えたモバイルPC的な電子基準点も存在します。火山の監視に特化したREGMOSです。


 写真はつくばで待機中のREGMOS本体です。

 北面を除くすべてが太陽電池パネルに覆われており、頂部の衛星携帯電話アンテナ(四角い箱)をデータ中継する静止衛星に指向させて設置します。
 現在REGMOSは11の火山・火山地域に15点が配置されており、「GNSS機動連続観測点」と名付けられた特別な電子基準点として運用されています。何か名前を聞くだけでもワクワク(ゾクゾク)してきませんか?

 国土地理院:GNSS火山変動リモート観測装置(REGMOS)に詳細解説が載っています。

 


「千歳」(960523)

 雪に覆われた電子基準点「千歳」(960523)を2018年2月に訪ねました。当時の気温はマイナス6度。すぐ近くの支笏湖岸には、巨大氷柱が立ち並ぶ「氷濤まつり」の会場があり、一帯は「支笏・樽前火山群」と呼ばれる地域でもあります。

 ネックウォーマーのようにピラーを覆う太陽電池パネルは、商用電源が途絶しても一定時間は機能を失わないようにするものですし、茶色い塗装は周囲の景観に配慮してのもの。

 つまり外観からだけでも「火山のある観光地である」ことが分かるわけです。

 なお、湖岸から撮った風不死(ふっぷし)岳の写真(下)には、左側に樽前山がわずかに映っていました。当時は、GNSS機動連続観測点「M樽前山A」と地殻変動観測点「樽前山1」「樽前山2」が設置されているなどとは知らず。 

 それなりの装備と覚悟が必要になるでしょうが、機会があればぜひ訪ねてみたいと思っています。 


千歳川の源流である支笏湖の湖岸から望む風不死岳(2018-02-06)