鹿児島、鹿児島、桜島

 先に紹介した「鹿児島1A」には、「鹿児島2」「鹿児島3」というきょうだいがいます。 近隣に複数点あるとき点名は「地名+数字」となり、鹿児島のように「3」まであるのは全国で17点、「4」があるのはわずか7点です。

 このくらい希少だと理由もはっきりしており、「稚内」「根室」「室戸」などはじっこのほう(失礼!)にある広大な自治体か、「三宅」「大島」など火山を取り囲むよう配置されたケースです。

 

 鹿児島市の活火山・桜島も、旧町名を残す「桜島」「鹿児島2」「鹿児島3」の3点に囲まれています。全国の電子基準点は平均間隔20kmですが、この3点は間隔が6~8kmとかなり密になっています。

島を囲むように「大島1~4」

同じく「三宅1~4」


 桜島の火口から見て北側、時計の文字盤で12時の位置にあるのが、電子基準点「桜島」。3時の位置の黒神地区は昭和に入ってからの噴火で溶岩流被害の出た場所です。「鹿児島2」小学校に隣接する場所に、防災無線の放送塔といっしょに置かれています。7時の位置、鹿児島市東桜島支所の敷地内にある「鹿児島3」

 共通していたのは、バックアップ電源として太陽電池パネルを備えていることと、通常では稀なステンレス表面に浮いたサビが見られることです。火山性ガスか潮風か、あるいはその両方の影響なのでしょうか。島を周回する道路脇には、火山弾を避ける退避壕や土石流などを想定した砂防施設など、臨戦態勢のインフラ設備もありました。

 鹿児島港と結ぶ桜島のフェリー乗降場は9時の位置。天候には恵まれなかったものの島1周を約1時間、長針のスピードで巡ることができました。


 なぜ火山監視に電子基準点が使われるのかといえば、マグマ上昇などで生じる山体膨張を表す基準点の点間距離を、リアルタイムに正確に把握できるからです。

 最も原始的な距離監視の方法は、2点に糸を張り渡す手法です。距離が縮めば糸はたるみ、広がれば切れます。もし、温度湿度の影響を受けずものすごく伸びにくい糸があったなら、それを火山周囲に張り渡すことで、山体のわずかな膨張を見逃さずとらえることができるはずです。
 電子基準点を使った観測も原理的には似ています。糸の代わりに使うのは、GNSS衛星が測位信号を送るために使う電波そのもの。この”仮想的な糸”を衛星を経由して2点間にピンと張りわたすというイメージです(下はイメージ図)。

 単独ではなく複数のGNSS衛星で、さらに複数の周波数の信号(Multi-Constellation and Multi-Frequency)を使い、”なるべく多くの糸”を張ることで、距離の変化をミリ単位の正確さで把握することができています。

GNSS観測データの解析により、2点間の距離を正確に求めることができる。写真は、石岡測地観測所の写真を加工した