兄弟どころかクインテット

(図:国土地理院HPよりキャプチャ)

 国土地理院は電子基準点の詳細な情報を大量に公開していますが、その多くはユーザー登録や用途の申告を伴うプロ仕様の仕組みのもとでの公開であり、ライトなファン層(そもそもいる?)には敷居が高いように思えます。

 もちろんログインせずに見られる情報の中にも地味ながら面白いコンテンツはあります。その一つが「基準点コード一覧表」です。各点に付与されたコードや地名や設置場所、受信機やアンテナの機種名がリスト化されているだけなのですが、局名称を眺めるだけでも楽しめます。たとえばこんなクイズを作ってみたりとか。


電子基準点クイズ・初級編

 

Q.国会議事堂の前庭で2018年3月から観測を開始した最新世代の電子基準点は「東京千代田」ですが、では「千代田」はどこにあるでしょうか? 都道府県名でお答え下さい。

(こたえ:広島県。ATのH氏がネタ元)


 駅の名前や高速道路のインターチェンジ名などと同様、基準点名もユニークなものでなければなりません。システム内での重複は、混乱を生んでしまいます。

 国会議事堂を望む東京都千代田区永田町一丁目1番地の国会前庭、それも「日本水準原点」の目の前に、満を持して建立された新世代のシンボルとなる電子基準点の名称を「東京千代田」(171222)とせざるを得なかったのは、広島県の千代田町(現在の北広島町千代田)にすでに「千代田」(950400)が稼働していたからでした。

 この千代田と同じ来歴の兄弟点は他にもあります。 長野県南佐久郡川上村の「川上」(960613)と奈良県吉野郡川上村の「奈良川上」(021009)です。局番号が示すように後から生まれた奈良県のほうに県名が前置されています。

 また、ひとしく県名のつく兄弟点も多く存在します。というかそっちのほうが主流かもしれません。「和歌山海南」(940069)「徳島海南」(950424)は、設置年度が1年違いなので、おそらく計画段階で調整が行われたのでしょう。リストに踏み込めば、鹿島トリオや川崎トリオ、さらには川内カルテットや一宮クインテットも見つかりました。


【鹿島トリオ】

(小笠原、本山、中田浩が本家?)

「茨城鹿島 」(93009)

「佐賀鹿島」(950455)

「鹿児島鹿島」(950455) 

【川崎トリオ】
(田中、三笘、旗手が正解?)

「宮城川崎」(950178)

「神奈川川崎」(93026)

「岩手川崎」(960545) 

【川内カルテット】

「青森川内」(020895)

「福島川内A」(091176)

「愛媛川内」(950433)

「鹿児島川内」(970835) 

【一宮クインテット】
「愛知一宮町」(93102)

「兵庫一宮」(950344)

「淡路一宮」(950360)

「山梨一宮」(960606)

「愛知一宮2」(970822)



 そもそも地名は地形や風土の言語表象であり、語彙の数にも限りがあります。範囲を広げれば重複するのは当然で、首都圏のタクシードライバーを悩ませる「綾瀬問題」と構造は同じです。

 ピン(単独)から始まり兄弟やトリオ、さらにはカルテットやクインテットまでが存在する事実は、電子基準点のネットワークが日本全土をカバーするひとつのネットワークとして運用されていることを象徴的に示すものだ、とも言えるわけです。強引だな。