土台が大事という話

 およそ地面に設置される構造物には、しっかりした土台が必要です。ビルも橋も道路も堤防も、基礎の重要性は強調してもしすぎることはありません。作られた年代や設置される場所により多少のバリエーションはありますが、電子基準点の足元にも強固なコンクリート基礎が埋まっています。

 そのおかげか、東日本大震災で被災した「田老」(020906)は、津波を受けながらも壊れませんでした。

 もちろん倒されたものもありました。なぎ倒されたピラーの見えるこの写真は「S南相馬」。ただ意外にも、ここまで破壊されたのはこの1点だけだったそうです。


津波に耐えた「田老」(左)と、なぎ倒された「S南相馬」(右)(写真:国土地理院)

(写真:国土地理院「電子基準点1,200点の全国整備について」などより)

  ハードウェアとしての電子基準点は時代とともに改良されています。大きく3分類されており、もっとも初期のタイプが鋼製のパイプを構造材とした93型、続いて角柱と円柱を組み合わせたマッチ棒状の94型です。現在新たに建てられるタイプは外形が八角柱の02型となっています。
 さらに細かな分類では93型でもレドームと呼ばれる頂部のアンテナカバーが円錐形の初期型と球殻状の後期型に分かれていたり、94型に続き、写真だけでは相違点の確認が難しい95型があったりします。
 


 形状名「二重管八角」の02型は、名前のとおり柱が二重構造になっています。

 内側の柱が構造を支え、外側の柱は日射による温度変化で生じる伸縮を緩和します。頂部のアンテナ位置を揺らがせないための工夫です。

 さらに図面を見ると、ピラー(柱)の下には 2.5m角・深さ1.15m基礎コンクリートが置かれています。基礎コンの下には砕石層とΦ300mmのコンクリートパイルも描かれています。
 一般の電柱とはケタ違いの丈夫さです。当初から電子基準点は「風速60mに耐える」が設計指針だったそうです。

 電子基準点5タイプのうち4つが90年代半ばに集中しているのには理由があります。1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災です。
 実は震災の前年からGPS観測で地面の動きを知る目的で、違うエリアを対象とする2種類のネットワークの整備が始まっていました。はからずも大震災でその性能が実証され、それらを統合した全国規模のネットワークの整備が一気に進みました。これにより日本は世界的にも稀な全土をカバーする高密度の観測網「GEONET」を手にすることになりました。

 2011年3月11日の東日本大震災でGEONETは大地の動きを克明に捉えました。これにより新たな役割を担うことになりますが、その話はまた項を改めて。

電子基準点「田老A」(111184)

三陸鉄道リアス線・新田老駅(2020年5月開業)がすぐそば

電子基準点「S南相馬A」(11S070)
関東大震災を電信で世界に伝えた「原町無線塔」遺構のすぐそば


 

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